Lesson

読んだり、飲んだり

辞去

今度の金曜日、ながく働いてきた職場を離れることになっている。前の職場と合わせれば、ざっと5年以上はこの仕事をしてきたことになる。しんどさもあったが、おそらく向いていたのだろう。お節介と軽口でなんとかやってきた。

金を稼ぐためにはじめたはずで、与えられたことをこなすだけのつもりだった。理念など大層なものは持ち合わせていない。子どもが好きなわけでもない。しかし、続けていくうちに、その責任の重さに思い至らないではいられなかった。

自分の不用意な発言が彼等の人生を狂わせることがある。自分が教えそびれたものがきっかけで目標に届かないこともある。あのとき、あれを言わなければ、あれをやっておけば……。

自分の影響など、彼等のながい人生からみれば大したことのないもので、むしろ良い思い出として振り返ることができるものかもしれない。しかし、その時期の、あらゆる可能性があったはずの瞬間を閉じてしまったとしたら、それは取り返しのつかないことだ。たかだか数年間とはいえ、その短い時間が言いようもなく自身の人生に影を落とすということは往々にしてありうる。

そこまで考えることは傲慢であるかもしれない。自分の存在が彼らの人生に大きく干渉しているなど、ただの妄想に過ぎないかもしれない。それでも悔いは残る。