Lesson

読んだり、飲んだり

V型12気筒

いちばん好きなフランス映画はたぶん「トランスポーター」だと思う。

開始まもなくの静かな様子から銀行強盗を逃がす一連のシークエンスはまさに圧巻だと思う。ステイサムの融通の利かなそうなプロフェッショナル感とそれをはっきりと明示する三つのルール。カーチェイスには追いつかれるかどうかというハラハラ感よりも、どうやって置き去りにするのかというワクワク感がある。BMWの心地よいエンジン音や細かく頻繁なミッション操作がまた楽しい。

キャラクターはどれもチャーミングである。自らの運ぶ荷物が人であることに気づくと彼女にオランジーナをストローで飲ませるステイサム。そのすぐあとに騙され脱走されるステイサム。それを捕まえて車に戻ると警察官がおり、やむなく彼らをぶちのめすステイサム。終盤にある油まみれのアクションシーンも面白いし、敵を倒すために使った服をあとで回収するのも良い。

そして何よりヒロイン役のスー・チーがべらぼうに可愛い。マドレーヌ焼いたとことか可愛い。キャーキャーとよく喚くところもそんなに気にならない(そりゃ隣にステイサムだし)。警部も味がある。絶え間ないフレンチ・ジョークは個人的に好み。とりわけ、プルーストを引き合いに出して、「あいつは良い刑事になっただろう」っていうところが好き。

残念なのは物語の後半になるにつれ車の存在感がほとんどなくなること。一応、バスのなかで殴り合ったり、トラックの運転席で揉み合ったりという場面はあるものの、カーチェイス的な場面はほとんどない。

序盤にあったプロとしてのダークさみたいなものが薄れて普通のヒーローになっていくのもちょっと拍子抜け。でもそんなところも好き。わかりやすいハッピーエンドも良いもんだと思う。