Lesson

読んだり、飲んだり

予期された座礁

「文学ナタリー」が欲しいと言ったってないのだから、作ろうかと思って色々考えてみたが、どうも個人で運営していくのは難しそうだ。

サイトのかたちを作ること自体はそこまで難しくない。もちろん、素人がすぐにどうにかできるほど単純ではないだろうが、時間さえあればなんとかなるとは思う。なにせお手本にできるところがごろごろある。これはと思うところをパッチワークにすればいい。アイデアは後からついてくる。

即応性・横断性に伴う膨大な作業量がまずネックだ。

小説・詩・評論・エッセイ……etc.それぞれのニュース・レビューをはじめとした記事作成を短期間で並行しておこなうのはちょっと現実的じゃない。完全に網羅するのではなく、ある程度的をしぼり、あまり内容に踏み入らない簡単な紹介に終始しても厳しいだろう。取り上げるべき注目の作品が、各分野、月にだいたい5つくらいあったとして、4分野で20作品。リリース日のお知らせだけならなんとかなるかもしれないが、読むとなったらまず無理なんじゃなかろうか。個人で持続的にやっていくにはハードルが高い。情報収集にも手間取ることを考えると作業量の問題は深刻といえる。

次に、メディアとして認められていない状態で活動することの難しさがある。

当然のことだが、ナタリーはじめ種々のインターネットメディアは商業メディアとして組織化され、法人化され、認められている。法人がどうのというのは本質ではないだろうが、つまりは情報元(版元)に情報を発信する存在だと認識され、信用されているということだ。だからこそ、インタビューもできるし、アーティスト写真やライブ写真、映像作品の場面写真も載せられる。発表前の情報をプレスとして受け取れる。

現状、研究や教育が目的の場合を除き、ほとんどの出版社が個人への画像素材等の使用申請を受け付けていない。インタビュー依頼なども、作家との個人的なパイプがないまま馬鹿正直に出版社に問い合わせれば門前払いを食うだろう。

個人的な趣味の範疇でやっているかぎりにおいては、お目こぼしがもらえるかもしれないが、問い合わせてしまったら権利保護の関係でNOと言われるのは当たり前だ(ブログやツイッターなどにどこからか拾ってきたパッケージ画像やスクショなんかが氾濫しているのはたぶんお目こぼし。コミケなんかの二次創作と一緒。ああいうのも言ってしまえば権利侵害)。万が一、権利物によって利益を得ていると見なされれば法的手段もありうる。そうした動きは手慣れたものだ。

版元との取り引きができていない以上、作ったとしても記事に表紙画像を織り込んだりするのは難しいことになる。となると考えられるのは、許諾を得ずに拾ったり、自分でスキャンしたりした素材を使った海賊サイトとして、指摘され捕まるまで素知らぬ顔で運営するか、文字ばかりのニュース・レビューサイトとしてやっていくかだ。もちろん、表紙がなんだ、著者近影がなんだ、イベントの写真がなんだ、文字だけだってやれないことはないじゃないかと思わなくもないが、実際は厳しいだろう。少なくとも作品それ自体に通じる窓口として機能させるにはあまりに大きい欠落になる。見ず知らずの人間が寄せた立派なコメントよりも、表紙一枚、写真一枚が説得力や魅力を放つことはふつうにありうるのだから。

個人のあやふやさはソースの信頼性にも関わる。対外的なやりとりがないままに、どれだけ良質な記事やサービスを提供しても、それは所詮、よくできた素人の独り言である。真に受けてくれる人もいるだろうし、そうした人を増やすことにも意義はあるだろう。そこからメディアとして認められる可能性もあるかもしれない。出始めのころの新聞のように。だが、どこまでありえるか。

発信者としての個人のステータスを定着させるという方法もないではない。要するに、自分が信頼に足るようになる、プロップスを手に入れるというものだ。こいつの言うことなら信頼できるというふうになれば確かにソースとしての説得力は増す。だが、それだったら、いまからやる意味があるのだろうか。松岡正剛ではないか?別に千夜千冊をやりたいわけではない。それも面白そうだけれども。

じゃあ、商業的なラインにのっていない、アマチュアを対象にしたものにするか。同人誌ナタリー。誰が見るというのか。同人誌をやっている人間は見るか。どうだろう、価値化する自信がない。

こんな感じで頓挫しかけてる。というかしている。

隣接領域を惑乱していくのは大事だと思うんだけどなぁ。

結局、場を作りたがるわりには能力がないのだ。そもそも記者としての能力がないという事実も棚に上げっぱなしだ。

プレイヤーになりたいのか、そうじゃなくてべつのものになりたいのか、そんな区別なんか大した問題じゃない、全部やればいいと思ってきたからよくわからない。ここにきて分裂している。前から?どうでもいいか。

やっぱり身内向けのなんちゃってでやってみようかと書いてるうちに思ってきた。