Lesson

読んだり、飲んだり

From Canada

AmazonでTシャツを買ったら、わずかに送料無料に届かず、何かないかと探した挙句になぜか樋口一葉の『にごりえたけくらべ』を一緒に買った。頼んでもないのに置き配だった。

新潮文庫版。表紙がダサい。前からこんなものだったか。

べつに読みたかったわけじゃない。なんとなく。もしかしたら家に旧版だか岩波版だかがあったかもしれない。

ふと「にごりえ論」がよぎったから。

ぜんぜん細部を思い出せないけど、あれひどかったなあ。〈国民〉がどうとか、「悲惨小説」がどうとか言ってたっけ。ひどいけどけっこう好きだった。

自分のなかに落とし込みきれていない概念やタームを無理やり引っ張ってきて、大風呂敷を広げて、結局、特定のジャンルには収まらないというベタな結論から固有性を主張するっていう典型的な見切り発車で。勢いだけで。歴史的な背景への理解や概念の背負う文脈の精査が雑で。そもそもっていう指摘がいくらでもできそうで。

でも、なんかパワーがあった気がするんだよね。やりたいことやってやったって感じが。やりたいことから組み立てた感じが。

あれをなんかの発表でやったってのが最高。尖ってたねえ。これはお互いに。

 

なにはともあれ、面白い作品批評がもっとばんばん出てこないかな。

「小説」とは、みたいな大仰なテーマに向かっていくのも好きだけど、これは一大事業だって。

ジェンダー」だって「コロナ」だって政治的ポリシーだって、作品批評で表現してくれればちょっとはコミットできるのに。いや、しないか。

批評は表現か?佐々木敦の新刊のあとがき……。