Lesson

読んだり、飲んだり

列車

梅崎春生の「蜆」を読んだ。

良い小説だ。

ともすれば説教臭い、センチメンタルな人間心理の表出に見えそうだが、列車の外へとはじき出されるおっさんと、その後の痙攣した車内の描写がじつに生々しく迫って、この男の抱えた問題がたしかに考えられるべきものだったのだと読む身につまされる。持ち帰ったリュックから鳴る蜆の声が耳から離れない。

どうして列車はいつもそこに乗る人の倫理を揺するのか。

「灰色の月」を思い出したり、古井由吉の「立場」の話を思い出したりした。サリンやジョーカーも思い出しそうだ。