Lesson

読んだり、飲んだり

ジョン・ウィック

新作ではなくて、一作目を午後ローで観た。

とにかく、やりたいことだけやった感じの映画。

粗が目立つアクション映画が減った昨今、珍しく穴だらけ。

アクション自体は良い。相手の動きを封じてから的確に頭を打ち抜くガンアクションが執拗に続き、プロっぽさ(そんなプロが本当にいるのか知らないけれど)を演出している。物陰に隠れながら音もなく近づき、声をあげさせないようにして殺すスニーキングシーンもハラハラはしないもののスタイリッシュ。カーアクションも派手(というか車自体も派手)。ラストはやっぱり安心の肉弾戦。

ただまぁ、全体としてゲームみたい。

登場人物も役割のはっきりした出で立ち。

チャラい音楽を爆音で流す車に乗って現れる、ロシアンマフィアのドラ息子。

息子を守りたいのか、自分の身を守りたいのか、稼業を守りたいのか、最後の方ではよくわからなくなってくるロシアンマフィアのボス。

電話口で秘密の合言葉を伝えると現れる遺体掃除業者。

殺し屋たちの緩衝地帯となっている老舗のホテル。

そこに勤める常に冷静でウィットに富んだ礼儀正しいホテルマン。

その地下にある秘密のクラブで、含みのある態度を取りながらも重要な情報をくれるホテルのオーナー。

主人公の無茶な頼みに応えるアジア系の闇医者。

裏切るとみせかけて結局裏切らない、主人公と親しい悪人面の殺し屋。

見た瞬間に「あ、こいつ敵だな」と思わせる金に目がくらんだ女殺し屋。

一般的な殺し屋もいるという世界観を見せるためだけに出てきたんじゃないかと思うくらい見せ場のない一般宿泊客の殺し屋。

などなど。

どの登場人物も、数年前の結婚をきっかけにして足を洗った伝説の殺し屋たる主人公を知っているのはさすがに笑った。主人公のことを知らないのは裏社会の浅いところで遊んでいたドラ息子だけで、だからこそ物語の発端になるのだが、「やべーやつを怒らせた」というそれだけで映画は進んでいく。時代感のない理性的な「ランボー」、と思ったけど、「ランボー」は誰にも知られることなく、居場所もなかったからこその悲劇なのでだいぶ違うか。

まぁ、そこらへんはさしたる問題じゃない。

たぶん、この映画の一番のツッコミどころは、どいつもこいつも鉄の掟を軽んじるところにある。

マフィアから主人公を殺す依頼を受けておきながら、あっさりと主人公のピンチを救う親友の殺し屋。案の定、あとで依頼主に殺される。

緩衝地帯となっているホテルで殺しは御法度という掟を破って、部屋で主人公を襲う女殺し屋。案の定、あとでホテル側に殺される。

自分の命を狙ってきた女殺し屋を殺さずに生かしておく主人公。案の定、逃げ出され親友が殺される遠因に。

自分の命を狙ってきたマフィアのボスを息子の情報と引き換えに生かしておく主人公。案の定、復讐として親友を殺されることに。

下二つはまぁ、足を洗った主人公の甘さ・人間性の演出として受け止められなくもないが、その前に散々ぶっ殺してるしなぁ……。なんでこのときだけ優しさをみせるのかはわからない。

あっさり息子を成敗し、その結果親友が殺され、という復讐の連鎖みたいなテーマは結構好きなんだけど、とにかく周辺の軽みがすごいせいで、人を殺すという因果な稼業に主人公が再び堕ちていく感じがあまりしない。世界観があまり広くないことも手伝って、表の社会なんてどこにもないような気すらするから、別に戻ったっていいんじゃない?くらいにしか思わない。復讐のむなしさも、ラストの犬を連れて帰るシーンに溢れる妙な前向きさで上塗りされている。

ケレンみだらけの設定は嫌いじゃないから、次作、次々作を観たらまた印象が変わるのかしら?

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