2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧
僕を忘れたころに 君を忘れられない そんなぼくの手紙がつく 前略 すっかり春めいて、上着の要らない陽気が続いたいま、数日前に撮った写真では寂しくなるほどに花が咲いています。工事も佳境に入り、ものものしいフェンスは取り払われ、遊歩道では薄着の職…
なんもめでたかねえけど寿司食いてえな。
北海道から帰ってきた弟はいまは都下のほうに暮らしていて、何かというと実家に帰ってくる。誰に似たのかたいそうなおしゃべりで、テレビCMごとにこの俳優は面白いだの、この新商品はあまり美味しくないだの、誰にともなくしゃべる。 幼い頃はひどく内向的で…
飲みに行きたさをコーヒーでごまかす日々。 自分で淹れるときは細かく挽いて苦めに出す。酸っぱいのは苦手。 いつだったか父が、アメリカンコーヒーを頼んだらブレンドにお湯を足して出す喫茶店に通っていた話を聞いて以降、そんなことはあるまいと思いなが…
私は小銃をになった自分の影をたのしんだ。日なた、軍靴の土煙をすかしてうつる小銃の影の林の中で、ふとその影をさがすということを私はいくどもした。 小島信夫の短篇「小銃」の書き出しである。学生のときから、珍しく何度も読んだ一篇だが、この書き出し…