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どこを見回しても「コロナ以後」ばかりで、正直困惑している。
自分もなにか真剣そうに語ってみようかと思ったが、特に言うこともない。
なにかに重ねて上手に言ってのけることもできなくはないと思っている。比喩は概念の根幹。
たぶん未だに甘くみている。それは間違いない。
湾岸に光が飛び交った後も、地下鉄に毒がまかれた後も、揺れで高速道路が倒壊した後も、双子に飛行機が突っ込んだ後も、テロが当たり前の言葉になった後も、津波がすべてをさらった後も、なすすべない白痴の振りをして――あるいは本当に――書いている。
それでいいような気もする。
やっぱり「以後」として受け止めなければならないのかなあ。
まだ、さっき書いたことがらが変えた世界にも馴染めている気がしない。
アクチュアリティとアンガージュマン。
カミュの「ペスト」の文庫本が売れているらしい。笑った。