Lesson

読んだり、飲んだり

150mlたまには

 

 私は小銃をになった自分の影をたのしんだ。日なた、軍靴の土煙をすかしてうつる小銃の影の林の中で、ふとその影をさがすということを私はいくどもした。

 

小島信夫の短篇「小銃」の書き出しである。学生のときから、珍しく何度も読んだ一篇だが、この書き出しの「小銃をになった」という箇所をいつも「小銃になった」と読み間違える。もちろん続けて読めばそんなわけはないと気づく。小銃は内地で触れ合った女だ。

そうした読み間違えを惹起するほどどうのこうの、などと言いたいわけではない。どうしたってこの書き出しが好きだということだ。

簡潔で爽快で、だからこそ異常で、とても身につまされる。

なんで好きなのだろう。

たぶん偏愛者が好きだ。狂人か。

屋根にのぼって星を落とそうと竿を振り回す男に真を夢見ている。きっと。